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お昼ごはんのパンケーキ

夏の暑い日、駅で待ち合わせをしていた。彼は笑顔でこちらを見て、手を振った。 おはよう、と昼なのに挨拶して、歩きだす。「お腹すいた?」と彼が言い、わたしはうん、と頷く。続けて彼は言う。「なに食べたい?」。 何が食べたいか、と聞かれてわたしが答えを出せたことはほとんどない。いつもパッと思いつかないのだ。なんでもいい。あなたと食べるなら、な

幸せの花

夏の昼下がり。部屋着のままふらりと外に出て、お花屋さんへ向かった。 近所の花屋は小さな佇まいで、店内に少し足を踏み入れても誰も出てこない。不用心だな、と少し思いながら店内を見渡す。薄暗い蛍光灯のガラスのなかに、小ぶりのひまわりがたくさん並んでいた。 わたしが一番好きな花。太陽のような、元気な黄色。 「すみません」 わたしが言うと、花束の

ぜんぶそうぞうです

「もう寝よっか」「そうだね」「おやすみ」などと言い合って、耳に押し当てていたケータイを少し離す。なんとなく通話を終了できずにいると、相手も通話を終了させないままの時間が続く。夜のまっくらな部屋に、微かな電子音が響く。 もちろん寝息なんて確認できないし、のび太でもなければ寝られないくらいの時間しか経っていない。 でもわたしは小さな声でつ

昔話をしよう

3ヶ月前、好きになった人を空港まで見送りに来た。 たった1ヶ月しか一緒にいなかった。本当に好きだったのか、単に一緒にいる時間が長かったからそう感じたのか、はたまた留学の寂しさからそう思い込んでいたのか、今では、というより今でも、たぶんこれからもわからない。 初めて行ったのは水族館だった。よく話して、いちいち優しくて、どうでもいい話にも反

理由がいらなくなる理由

冬の青空を見ると思い出す。 「今日いい天気だね」なんて、スーパーどうでもよいことを連絡していた相手のこと。 あれはたしか2月のことで、もうたぶん3年前だ。結果から言うとその人とはその年の4月ころにつきあい始め、もうお別れした。わたしはふだん、日常的に誰かと連絡を取り合う習慣がなくて、それこそ「本日の天気」などという世間話の王道のようなテー