LOG IN

心細さと友だちになる

by あいきた

日が昇る前に家を出た。朝の6時。
シアトルに行くために6時半のバスを予約していた。外はまだ朝日のかけらも見えず、夜と間違えるくらいに真っ暗だった。早足で駅に向かう。寒くて、風が強くて、雨が降っていて、歩く人が少なくて、わたしは心細かった。
なんで、ひとりでシアトルに行くことにしてしまったんだろう。今からでも引き返そうか。ひとりで行くなんて、ばかじゃないの。
頭のなかで繰り返す。外が暗いせいで不安で不安で、それを振り払うように歩くスピードを速めた。

わたしって夜が苦手なんだ。初めて気づいた。日本では別になんともないけれど、それは慣れているからであって、日本で夜道を歩いて帰り着く先にはいつも家族がいて、わたしはひとりじゃなかった。でもここではひとりだ。

バスに乗って、出国手続きのカードを渡されたけれど、ボールペンを忘れてきていた。隣の席は空席。ひとりだとペンを借りる相手さえいないんだ。余計に心細くなった。携帯はWi-Fiがないと繋がらないし、道に迷ったら連絡する手段もないし、「困ったねえ」って一緒に笑ってくれるひともいない。ピンチのときに一緒に笑ってくれる存在がどれだけわたしの心を軽くするのかを知った。

アメリカとの国境についたときもまだ外は真っ暗だった。インタビューのお兄さんは親切で、英語はききとりやすかった。お金を払ったときのお兄さんもおもしろくて、「はい、これはおみやげのレシートだよ」を冗談を言い、「バンザイ!」と日本語で言った。

しばらく乗っていると外も明るくなってきて、バスは家や、農場みたいなところを通り過ぎて行く。隣にも人が座った。明るくなったことで安心したのか、気づいたらわたしは熟睡していて、気づいたらシアトルに着いていた。

初めて降り立つシアトルの街並み。バンクーバーには住み慣れてしまって、もう海外の実感はないので、ずっと海外にいるのに「海外に来たんだなぁ」などと思った。シアトルには日本のものが売られているスーパーや紀伊國屋書店があって、妙に安心したし、ここでようやくわたしは来てよかった、と思ったのだった。

シアトルの街は新鮮で、あたたかくて、人は優しい。日本のスーパーがあるのに、日本語を耳にする機会はバンクーバーより圧倒的に少ない。なんとかなって良かった、ひとりでも大丈夫。
もうすぐまた夜が来るけれど、綺麗な夜景を見に行く予定。そして美味しいものを食べよう。


あいきた
OTHER SNAPS