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ぜんぶそうぞうです

by あいきた

「もう寝よっか」「そうだね」「おやすみ」などと言い合って、耳に押し当てていたケータイを少し離す。なんとなく通話を終了できずにいると、相手も通話を終了させないままの時間が続く。夜のまっくらな部屋に、微かな電子音が響く。
もちろん寝息なんて確認できないし、のび太でもなければ寝られないくらいの時間しか経っていない。

でもわたしは小さな声でつぶやく。「もう寝た?」と。

こういうときの答えは2パターンあって、1つは「まだ寝てないよ」と笑うのと、「もう寝たよ」とふざけているものだ。後者のとき、わたしは「うそだ」と言う。「ほんとだよ、もう寝たよ」と眠そうな声が返ってくる。

電話はリアルタイムだから、時間を共有できないテキストより、距離をこえられる。でも空気は共有できない。どんなふうに笑っているのかな。何が見えてるのかな。ぜんぶ、想像するしかない。

だからわたしは想像する。きっとグレーのスウェットを着て、ベッドにごろんと寝転がって、枕元にペットボトルを置いて。わたしのオチのない話に寝ぼけながら相槌をうって、わたしの話のオチに呆れたような困ったような優しい顔で笑っているだろうって。

代わりに想像してくれてるかな。話そうと思って溜めておいた話を次から次へと話し続けるわたしの顔が、ちょっとにやにやしてること。


伝わんないかなあ。そう思いながら、わたしは真っ暗闇の沈黙を眺める。眠そうな顔を、想像してみる。


あいきた
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